アーカイブ III (1957年〜1961年/6枚)
Update:00.12.3
この時期、自伝から読みとれるアート自身の私生活からは想像できない量(56/7〜61/1のあいだに60回以上)のレコーディングとクラブでの演奏をこなし、当然ながらどれも質が高くアートは絶頂期にあったと言える。が、相変わらず私生活では密売人との関係を断ち切ることが出来ずやがて3度目のブランクを迎えることになる。
Cover Design
Album Title & Contents
Personel & misc.

■Art Pepper meets The Rhythm Section
You'd be so nice to come home to
Red Pepper Blues
Imagination
Waltz Me Blues
Straight Life
Jazz Me Blues
Tin Tin Deo
Star Eyes
Birks Works
The Man I Love
Art Pepper (as)
Red Garland(p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
Total Time/50:48

※アートの代表作に数えられる1枚。しかし、このレコーディング直前のエピソードを知ると呆れるというか恐れ入るというか、やっぱり天才だなぁとつくづく感じる。

Recorded 1957.1.19
Contemporary's st.@L.A.
★このころアートはエンゼル・ハウス(ジャズクラブ)で働き、時々レコーディングも行っていた。しかしそれらの収入はヤクを手に入れるためにほとんど消えていく。ダイアンとも口ケンカばかりでうんざりしていたある日、この名盤の誕生となる。以下は自伝からの引用。
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ある朝、ダイアンは僕を起こし「今日はレコーディングの日でしょ」と言った。しばらく演奏していない。何もしていないんだ。「からかっているのかい。いったい誰と、どこで、どんなレコーディングするんだ」と僕は尋ねた。<中略>あまりに長い間マウスピースをさしっぱなしにしていたのでコルクが入り込んでしまい、ネックの端は金属がむき出しになっていた。
<中略>
挨拶が終わって、サックスとマイクのバランスなどセッティングを済ませると、レコーディングの準備完了だ。レッド・ガーランドが僕を見つめている。だが、僕の頭はからっぽだ。いつだってそうなんだ。僕は記憶力が弱いらしく、何を演奏すればいいのかわからない。レッドが「いい曲があるよ。知ってるかい?」と訊いてきた。彼が始めた曲は、僕も聴いたことがある。「何ていう曲だっけ?」「ユー・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥさ」「キーは?」「Dマイナーだ」.....すばらしい出来だった。僕のプレイは抜群だった。リズムも抜群だ。<以上、p.200〜203より抜粋>
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■the art of pepper
Holiday Flight
Too Close For Comfort
Long Ago And Far Away
Begin The Beguine
I Can't Believe That You're In Love With Me
Webb City
Summertime
Fascinatin' Rhythm
Body And Soul
Without A Song
The Breeze And I
Surf Ride
Art Pepper (as)
Carl Perkins(p)
Ben Tucker (b)
Chuck Flores (ds)

Total Time/64:57

※ジャケットデザインがチープだったので手に入れたのは比較的最近。しかし、やっぱりこれもスゴイ。ポーターやガーシュインを取り上げたのも個人趣味的にはポイントが高い。

Recorded 1957.4.1
Hollywood@L.A.
★前の「ミーツ・ザ・リズムセクション」録音から約3ヶ月。ライナーノーツにもあるが、録音レベルや各楽器のミキシングバランスがイマイチなのが悔やまれるが演奏は最高。共演のカール・パーキンスは1年後に自動車事故で世を去ったが、後にアートは「彼を失ったのはショックだった。何回も一緒にやったんだから。すばらしい才能の持ち主だし、いい友達だったんだ。僕の名で出した二枚の新しいレコードも彼との共演だ。アラジン(イントロ)・レコードでオメガ・テープしかないのは残念だけど。この二枚のLPが彼の最高の作品だね。」とこのアルバムを指して語っている。

※トッド・セルバート氏編集によるディスコグラフィーではこのアルバムのレコーディングは1958年1月(日は不明)となっているが、ライナーノーツではその間違いを指摘している。
 

■ART PEPPER + ELEVEN
Move
Groovin' High
Opus De Funk
'Round Midnight
Four Brothers
Shawnuff
Bernie's Tune
Walkin' Shoes
Anthropology
Airgin
Walkin'
Donna Lee
Art Pepper (as)
Pete Candoli (tp)
Jack Sheldon(tp)
Dick Nash(tb)
Bob Enevoldsen(ts)
Bud Shank(ts)
Dick Nash(tb)
Bob Enevoldsen(ts)
Bud Shank(ts)
Russ Freeman (p)
Joe Mondragon (b)
Mel Lewis(ds)
Total Time/41:08

※確か一番最初に買ったアートペッパー作品。その頃はまだLPが主流で、近くの電気屋さんに頼んで取り寄せてもらった思い出深いCDアルバム。後に国内盤も発売され、ジャケットデザインがLPと同じモノになった。

Recorded 1959.3.12〜
Contemporary's st.@L.A.
★アート自身も時々語っているが夢は自分のビッグバンドを持つこと。このアルバムの仕掛け人はレス・ケーニッヒで、編曲を担当したのはマーティー・ペイチ。以下はそのペイチの証言。
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俺が初めてアートに出会ったのは50年代、戦争が終わってまもない頃だ。
<中略>
「アート・ペッパー・プラス・イレブン」のレコーディングをするという噂が広まると、町のミュージシャン連中、一流のプレイヤーたちから一緒にやらせてくれないかという電話を受けた。アートがそばにいると、スリリングなほどの感動に包まれるものだから、みんな彼のセッションに加わりたがったのだ。アートについてはいくら語っても語り尽くされるものではない。彼がプラス・イレブンの件で俺に電話をかけてきた時、俺はアートと仕事をするってんで、天狗になったよ。俺たちは長い間一緒にやったが、作曲に関する限り、俺はアートに誠心誠意を尽くしたね。アートには才能のあるところを見せなければならないと思ったんだ。俺は彼の高さに少しでも近づこうと努力した。俺の言っていることがわかるかな。あの時代はそんな時代だったんだ。
<中略>
俺が声を大にして言いたいことがある。音楽的なことだが、アートのすばらしさは、美しいプレイをするということだけでにとどまらない。美しい旋律をプレイできる演奏者はこの世にたくさんいるが、みんな音が頼りないのだ。ジャズで最も大切なスイングの部分になると、どうもきまらない。彼らは音を出すのに夢中で、スイングすることまで気が回らないのだ。しかしアートは両方を一緒にやってのけてしまうのだ。彼はメロディを大切に、一音一音をスイングさせるんだ。それは大変重要なことだ。心に留めていただきたい。アートはいつもスイングに徹した。それが他の誰よりも秀でていた要因だ。それに彼はどんな楽器でも使いこなせたし、すべて正確な音を出した。彼が吹けば、どの楽器でもみんな「アート・ペッパー」の音を出した。バリトンであろうと、テナーであろうと、クラリネットであろうとかまわない。彼は最高にスケールの大きいプレイヤーだ。これからもずっとそうだろう。<以上、p.226〜230より抜粋>
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■GETTIN' TOGETHER!
Whims Of Chambers
Bijou The Poodle
Why Are We Afraid?
Softly, As In a Morning Sunrise
Rhythm-A-Ning
Diane
Gettin' Together-Orig.Take
Gettin' Together-Alt.Take
The Way You Look Tonight
Art Pepper (as)
Conte Candoli(tp)
Wynton Kelly (p)
Paul Chambers (b)

Jimmy Cobb(ds)
Total Time/58:42

※Meets the rhythm sectionに続くマイルスのリズムセクションとの共演(競演)第二段。前作と違い練習も充分で、アート自身はこの作品の方が気に入っていた様子。

Recorded 1960.2.29
Contemporary's st.@L.A.
★自伝によるとこの頃「世界は僕の思うように回っていた」ようだ。しかしほんのちょっとした出来事が、やがてアートを下り坂に導くことになる。
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ある夜、誰と一緒だったかは忘れたが、とにかくレコーディングのあった日、セッションが終わって、僕はハリウッドからスタジオ・シティへフリーウェイにのっかって車をとばしていた。ほんのちょっとした距離だった。僕はリンカーンのラジオをつけた。レイ・チャールズが「ザ・アウトスカーツ・オブ・タウン」を歌っていたのを憶えている。急に僕はとても悲しくなってきた。「これは違う。何かが違うんだ。」僕はラジオを消しウィットセットで脇道にそれ、考えもせずにフリーウェイの下で左に曲がった。そしてまた左に曲がり、フリーウェイにのった。僕はハリウッドのハリウッド・ハイウェイへ向かって進んでいた。それはサンタアナ・フリーウェイ、つまり東部ロサンジェルスへ行く道へつながっている。東部ロサンジェルスは僕が麻薬を買っていた、ヘロイン時代の友だちすべてがいる所だった。<後略>
<以上、p.224〜225より抜粋>
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■SMACK UP
Smack Up
Las Cuevas De Mario
A Bit Of Basie
How Can You Lose
Maybe Next Yaer
Tears Inside
Solid Citizens-Take33
Solid Citizens-Take37
Art Pepper (as)
Jack Sheldon (tp)
Pete Jolly(p)
Jimmy Bond (b)
Frank Butler (ds)
Total Time/51:06

※2曲目のタイトルにもなっているマリオ・クエバスとは、メキシコ人の密売人のこと。

Recorded 1960.10.24
Contemporary's st.@L.A.
★アートとマリオ・クエバスとの最初の出会いは出獄後まもなくらしく、エンゼル・ルームで他のメキシコ人と同様にマリオもアートの演奏を好んで聴いていた。最初はマリオからヤクをやめるよう忠告を受けていたがやがて彼に金を払ってヤクを手に入れるようになった。アートはマリオを尊敬していたようで自伝にもこう語っている。
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インディアンの血が入っているメキシコ人は、僕の知る限り、強くて誇りがあって、足が地についた正直な人ばかりだ。気に入ればとことん好きだし、そうでなければそれまでだ。いい加減なところがない。マリオもそうだ。正直ですてきな人で、頼もしい友人だ。身代わりをたてるとか、自分が楽しむために人を苦しめるようなことは決してなかった。後に僕は、マリオに捧げる歌を書き、吹き込んだ。僕が今までに会った中で、最もすばらしい友人の一人だ。
<以上、p.199より抜粋>
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■INTENSITY
I Can't Believe That You're In Love With Me
I Love You
Come Rain Or Come Shine
Long Ago
Gone With The Wind
I Wished On The Moon
Too Close For Comfort
Autumn Leaves
Five Points
Art Pepper (as)
Dolo Coker(p)
Jimmy Bond (b)

Frank Butler (ds)
Total Time/54:48

※アートは1925年生まれだからこの時が35歳。ジャケット同様、内容ももの静かで深みが感じられる。

Recorded 1960.11.23
Contemporary's st.@L.A.
★たぶんこの頃がアートにとって人生最悪の時期と思われる。
ヤクを手に入れるために万引き、盗みを重ね、演奏する自信も急速に失っていく。そしてダイアンはある夜、売春容疑で逮捕されてしまう。
 
このあとダイアンの証言がキッカケとなりヘロイン密売の容疑(実際は密売に関わっておらず、ヘロインの常用者だった)で人生3度目の逮捕、長い沈黙期間に入ってしまう。

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